カテゴリ: マンガ・CG / 作品形式: マンガ
サークル: 元気太郎商店 / 評価: 4.69 (98件) / DL数: 1,821 / 価格: 1,320円
「年に一度の総決算」という言葉があるが、同人作家の年間まとめ本というのは、まさにその作家の一年間の息遣いを丸ごとパッケージしたようなものだ。サークル「元気太郎商店」による『元気太郎2024年作品まとめ』は、2024年にpixivや支援サイトで公開された作品をごっそり一冊にまとめたマンガ作品集である。こういう「まとめ本」は、追いかけていたファンにとっては保存版、初見の人にとってはお試しカタログ——どちらの立場でも気になるポイントがまるで違うので、そのあたりを丁寧に解きほぐしていきたい。
どんな作品なのか——「まとめ」の中身を正直に見る
まず大前提として、これは描き下ろしの長編マンガではない。2024年の一年間にpixivおよび支援サイトで発表された作品を集めたアンソロジー的な作品集だ。オリジナルと二次創作が混在しており、グレースケール(モノクロに近い階調表現)が多めとのこと。つまりフルカラーの華やかなCG集を想像して開くと、かなり印象が違うはずだ。ここは最初にはっきり押さえておきたいポイントである。
そしてこの作品集を語るうえで避けて通れないのが、「ほぼ全てロリ系」「裸足裏描写多め」という二つのキーワードだ。ロリ系というのは小さなキャラクター——いわゆるミニキャラ・ちびキャラ的な体型の描写を指す文脈だと思われるが、この手の性癖特化型の作品集は「刺さる人にはとことん刺さるが、そうでない人にはまったく響かない」という性質を持つ。裸足裏描写についても同様で、フェチとしての足裏は同人界隈でも一定の需要があるジャンルだが、興味がなければ「なぜこんなに足の裏ばかり……」となりかねない。逆に言えば、このふたつのワードにピンときた人は、もうこの時点で心のカートに入れかけているはずだ。そのまま入れてしまえ、と言いたいところだが、もう少し情報を整理しよう。
おまけとして、2024年2月のpixiv投稿作品の差分4枚に加え、12月に支援サイトへ投稿した長編漫画の制作進捗——キャラ設定画、ラフ、線画が48枚収録されている。この48枚というボリュームはなかなか馬鹿にできない。完成稿ではなくラフや線画だが、作家の制作過程を覗くのが好きな人間にとっては、完成品とはまた違った味わいがある。料理で言えば仕込みの段階を見せてもらえるようなもので、「この線からあの絵が生まれるのか」という発見があると、それだけで得した気分になる。ただし、この進捗部分には英語翻訳が付いていない点は留意しておきたい。本編は日本語版と英語翻訳版の2タイプが収載されているので、海外の友人に布教したい人にも対応しているが、おまけ部分は日本語オンリーだ。
評価4.69・DL数1821——この数字が語ること
平均評価4.69、評価数98、DL数1821。この数字を見て「まあまあ売れてるな」と思うか「微妙だな」と思うかは人によるだろうが、俺の見立てではこれはかなり堅実な数字だ。
理由を説明する。まず、年間まとめ本というのは新規を大量に取り込むタイプの商品ではない。基本的には「この作家の絵が好きだ」と既に分かっている人が買うものだ。つまりDL数1821というのは、元気太郎という作家に対して財布を開く覚悟のある人間がこれだけいるという意味であり、いわば固定ファンの厚みを示している。そのうえで評価数98人が平均4.69を叩き出しているのだから、買った人の満足度は相当高い。5点満点で4.69というのは、「期待通りだった」を超えて「期待以上だった」と感じた人がかなりの割合で含まれていないと出ない数字だ。まとめ本で内容を既に知っている人が多いはずなのにこの評価ということは、まとめとしての構成やおまけの付加価値がしっかり機能している証拠だろう。
ただ、ここで冷静になっておきたいのは、この評価はあくまで「ロリ系・裸足裏描写が好きな層」からの評価だということだ。ジャンルの嗜好が合致している人たちの中での4.69なので、嗜好が合わない人が同じ点数を付けるかは別問題。これは作品の質が悪いという話ではなく、ターゲットが明確な作品ほど「合う人からの評価は高く、合わない人はそもそも買わない」という構造になるという、ごく当たり前の話である。
この作品集が他と違うところ
同人の年間まとめ本というのは、正直に言えば珍しい形式ではない。多くの作家がやっている。しかし元気太郎商店のこの作品集が一線を画しているのは、支援サイトの有料プラン限定コンテンツを「一部例外を除いて全て」収載しているという点だ。
支援サイトの有料プランというのは、月額を払い続けた人だけが見られる特権コンテンツだ。それを年間まとめとして一括で手に入れられるというのは、支援サイトに毎月課金し続けるのと比較したときに、金銭的にもアーカイブ的にもかなりお得な選択肢になり得る。毎月の支援が積み重なれば年間で相当な額になるわけで、「2024年分だけまとめて欲しい」というニーズには1320円でドンピシャだ。もちろん、支援サイトにはリアルタイムで応援するという精神的な価値があるし、作家を直接支えるという意味合いもある。だが純粋に「コンテンツを手元に残したい」という目的であれば、このまとめ本の存在意義は明快だ。
一方で、pixivの無料公開分を既に全部見ている人にとっては、「自分が知らない部分がどれだけあるか」が購入の分かれ目になる。支援サイト未加入で、pixivだけ追っていた人には新鮮な部分が多いはず。逆に支援サイトの有料プランに入っていた人は、手元に保存版として持っておくかどうか、という判断になるだろう。
気になる点——正直に言っておきたいこと
まず、二次創作とオリジナルが混在している点。これは好みが分かれるところだ。二次創作の元ネタを知らない場合、その部分は楽しさが半減する可能性がある。商品紹介文にはどの作品がどの版権かの詳細リストは載っていないので、気になる人は製品ページのサンプル画像などで確認してから判断してほしい。
次に、グレースケール多めという点。カラーイラスト集を期待していると肩透かしを食らうかもしれない。ただ、マンガという形式を考えればモノクロ・グレースケールは自然な表現だし、むしろ線の力や構図で勝負する作家にとってはグレースケールのほうが映えることもある。ここは好みの問題だ。
そして、2024年6月27日のpixiv投稿作品が規約上の理由で収載されていないという注意書き。具体的な内容は明かされていないが、販売サイトの規約に抵触する表現が含まれていた可能性がある。「全部入り」を期待すると厳密には漏れがあるという点は、几帳面な人ほど気になるかもしれない。ただ、これは作家が誠実に明記しているからこそ分かることであり、こういう情報開示の姿勢は個人的には好感が持てる。隠したまま売るより、はるかに信頼できる。
どんな人に向いていて、どんな人には向かないか
向いている人は明確だ。ロリ系キャラや裸足裏描写に惹かれる人、元気太郎の絵柄が好きな人、支援サイト未加入だが過去作品をまとめて手に入れたい人。制作過程のラフや設定画を見るのが好きなタイプにも、おまけ48枚は嬉しいボーナスだろう。
逆に向かないのは、ロリ系やフェチ系の描写に興味がない人、フルカラー前提でCG集的なものを求めている人、二次創作の元ネタに馴染みがなく「知らないキャラの絵を見てもピンとこない」と感じるタイプの人。また、2023年のまとめは含まれていないので、過去作を遡りたい人は別途購入が必要になる。
1320円という価格について
現在セール中ではなく、定価1320円。年間まとめ本としてこの価格が高いか安いかは収録ページ数次第なのだが、支援サイトの有料プラン分が含まれていること、おまけの制作進捗48枚が付いていること、日英2バージョン収録であることを考えると、支援サイト未加入だった人にとっては十分に元が取れる価格設定だと感じる。毎月の支援費用と比べれば、一年分を1320円で回収できるのは冷静に考えてかなりお得だ。ただし、既に支援サイトで全部見ていた人にとっては「保存版として持っておくかどうか」の判断になるので、そこは自分の収集癖と相談してほしい。収集癖がある人間に「相談しろ」と言っても結果は見えているが、一応言っておく。
ロリ系と裸足裏——この二つのワードで心が動いた人は、サンプルを確認したうえで、自分の棚にそっと加えてみてほしい。刺さる人には、間違いなく一年分の幸福が詰まった一冊になるはずだ。






コメント